浦潮だより:空の旅
令和7年8月21日

浦潮だより:空の旅
令和7年8月21日
先日の一時帰国の帰路、成田から上海経由でウラジオストクに戻りましたが、上海ーウラジオ間のS7航空便がとても快適でした。S7は、ノボシビルスクに本社を置くロシアの航空会社で、極東の多くの路線をカバーしています。今回は上海に深夜に着いてから6時間も待ち時間があったせいもあるでしょうが、機内に入ると、客室乗務員さんが爽やかな笑顔と暖かいロシア語で、「おはようございます!ようこそ!」と挨拶してくれて、救われたような気がしました。他の乗客の皆さんも同じ気持ちだった様子で、「ロシアに帰ってきたぁ。」と思わずつぶやく人もいました。日本の航空会社に比べるとシートの設備や機内食は簡素なのですが、接客がとても親切で、寛ぐことができました。2時間半の短い飛行時間のうち、乗客が眠っている間は妨げず、目を覚ますとすぐに声をかけて、限られた時間の中で希望に応じててきぱきと飲み物や食べ物をサーブしてくれます。その間合いの取り方が絶妙でした。
極東に勤務していると、オーロラ航空、ロシア航空、S7といったロシアの航空会社のフライトを利用する機会が多くあります。日本でもよく知られているアエロフロートはもちろん最大手なのですが、チケット価格を比較しつつ、様々な会社を利用しています。
1990年代末に初めてロシアに勤務した頃は、搭乗時にチーフ・パーサーが指定する座席から勝手に移動すると叱られたり、籠に入れた鶏を持ち込む客がいたりと、地方路線はなかなかユニークで賑やかでした。着陸時は空いている座席の背が一斉にパタパタと倒れ、着陸に成功すると乗客全員で拍手する習慣でした。当時に比べると、今のロシアの空の旅は遥かにスマートになりました。
今、ウラジオストクから日本に帰るには、直行便がないため北京や上海を経由することになります。このため、中国と日本の間は、中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空、吉祥航空など、様々な中国系航空会社を利用してきました。今回利用した中国国際航空の機材は古いものでしたが、一般に、中国の航空会社は新しいエアバスなどを導入していることが多いようです。ウラジオストクと中国各都市をつなぐ路線はどんどん増えています。ハルビン、大連、西安、瀋陽など、一度は訪ねてみたい都市への直行便が相次ぎ開設されています。ちなみに、ウラジオストクー平壌の高麗航空便も飛んでいます。
2019~21年に勤務したベラルーシのミンスクでは、国営のベラビア航空がとても便利でした。機材は古いですが、ベラルーシ人は非常に几帳面で機内は清潔に保たれていますし、定刻運航の上に価格もリーズナブル。ミンスクからは東欧もコーカサスも近く、1時間半から2時間程度のフライトで様々な都市に行くことができます。私も当時、ヘルシンキやトビリシの友人を訪ねて旧交を温めることができました。2020年以降の状況を受けて現在は様子が一変していることでしょうが、ミンスクには交通のハブとして大きなポテンシャルがあります。


振り返れば、コロナ禍のさなか、2021年にミンスクから豪州に転勤したのも珍しい体験でした。ドバイ・シンガポール経由で豪州に飛んだのですが、シンガポールでの厳格な隔離体制はまるでSF映画のワンシーンのようでした。トランジット客が待機する場所は病院みたいな雰囲気でしたし、そこから搭乗口までカートで運ばれる時、両脇に並ぶショップがすべて閉まっているのを見て、背筋が寒くなりました。
ともあれ、空の旅は時代とともに大きく様相が変わっていきます。ウラジオストクから日本までも、直行便が復活して2時間で行けるようになる日がいずれ戻ってくることでしょう。ウラジオストクは、その日を心待ちにしています。
ともあれ、空の旅は時代とともに大きく様相が変わっていきます。ウラジオストクから日本までも、直行便が復活して2時間で行けるようになる日がいずれ戻ってくることでしょう。ウラジオストクは、その日を心待ちにしています。