浦潮だより:和の魅力

令和7年2月5日
カリーナ・モールの「豊洲市場」

浦潮だより:和の魅力
 

 令和7年2月5日

 

2019年にオープンしたカリーナ・モールは、週末に家族連れが集まる人気スポット。モダンなショッピング施設として、エコノミスト誌記事で取り上げられたこともあります。フードコートには、噴水を中心として各種料理店が並び、土日のお昼時にはほぼ満席になります。最初に訪ねた時に驚いたのは、ハンバーガー、コーカサス料理、韓国料理に混じって、日本料理店が3つもあることでした。また、別のフロアには、「これぞ日本の味」という日本語看板を掲げる寿司のテイクアウト店「豊洲市場」もあります。ウラジオストクの庶民生活に、和食がどっしり根を下ろしていることを感じます。

 

グランド・ホテルの「鉄板焼き」
街中でも数多くの和食店を見かけます。日本人シェフが活躍しているお店はごく僅かですが、グランド・ホテルにある「鉄板焼き」には、金角湾を行き交う貨物船を眺望する本格的な鉄板コーナーがあり、3代にわたる元日本総領事の公邸料理人を務めた楠美明(くすみ・あきら)グランドシェフが、目の前でおいしいロシア産牛肉や近海の魚を調理してくれます。また、北海道から進出した居酒屋「炎」(えん)は、在留邦人の心のオアシス。昨年は安部公房作の演劇「友達」の公演の後、三浦基(みうら・もとい)監督をはじめとする劇団関係者をこのお店にお招きし、公演の大成功を祝いました。

和食材は、市内に複数の店舗のある日本雑貨店「ダンラン」で買い求めることができますが、現下の状況では欲しくても手に入らない商品の方が多いです。一方、ロシア人には日本のお菓子や化粧品、和食器や小物が大人気。先日テレグラム(ロシアのSNSアプリ)をチェックしていたら、平昌五輪フィギュアスケート金メダリストのアリーナ・ザギトワさんが、大きな袋入りのクリスマスプレゼントの中に日本のお菓子を見つけて喜んでいました。「おいしい」はロシア語で「フクースナ」なので、「日本のフクスニャーシキ!」と呼んでいました。
 
ウラジオ名物のカムチャツカ・ガニ
和食に精通しているウラジオストクのお客人に納得してもらうためには、公邸会食の料理も相当に頑張らないといけません。幸い、和食専門の今井浩太良(いまい・こうたろう)公邸料理人とのご縁に恵まれましたし、ウラジオストクはホタテやタコ、カムチャツカ・ガニといった海の幸が豊かです。ただ、日本と違って刺身で出せる鮮魚が手に入りにくく、仕入れルートについて試行錯誤の日々です。
マッサージチェア「Yamaguchi」のカタログ
ところで、当地のショッピングモールでは、「YAMAGUCHI」というマッサージチェア店を頻繁に見かけます。空港や駅の待合スペースにも、カード払いで稼働するヤマグチ・チェアが置いてあります。聞けば、日本製ではなく、名前だけ日本風なのだとか。私が山口県出身だと話すと、あるロシア人に「ああ、当地のロシア人は誰でもヤマグチを知っている。マッサージチェアで有名だからね。」と言われてしまいました。ちなみにロシア語で「ヤー・マグーチー」は、「私はできる人」という意味だそうです。
 
これほどまでに和の魅力を感じてくれているウラジオストク。その土地柄を活かして、ユネスコ無形文化遺産に指定された日本の「伝統的酒造り」を含め、本物の和食の魅力を伝える努力を、地道に重ねていきたいと思います。