浦潮だより:漫画
令和8年2月17日
罪と罰(写真はいずれも樫本講師の提供)
罪と罰(写真はいずれも樫本講師の提供)
浦潮だより:漫画
令和8年2月17日
先日、在ウラジオストク日本総領事館では、日露の文学をテーマにしたセミナーを開催しました。講師にお招きしたのは、樫本真奈美(かしもと・まなみ)同志社大学講師と、作家でジャーナリストのワシーリー・アフチェンコさんです。聴衆の飛び入り発言も交えつつ、2時間にわたる熱のこもったセッションとなりました。オンライン参加の樫本先生のプレゼンテーションで、日本ではドストエフスキーの『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』が様々な作家によって漫画化されていることを知りました。最近の作品は、どれも登場人物が格好良く描かれています。日本のスマートフォン世代は書籍をほとんど読まないものの、文豪の作品を読みたい欲求はあり、それが漫画につながっているそうです。たしかに漫画には視覚的に一瞬で多くのニュアンスを伝える力があります。現代の若者も、孤独や社会からの疎外感、生きることの意味に悩んでいるのは昔と同じですから、古典作品の中の言葉に共感するのでしょう。スマホ世代は、今の自分の心情と一致する名文を切り取ってSNSで拡散するのだそうです。
罪と罰
カラマーゾフの兄弟
そういえば、ベラルーシ人作家スベトラーナ・アレクシーエヴィチの『戦争は女の顔をしていない』も、日本で漫画化されてヒットしたことがありました。私自身は翻訳された本の方が遙かに意味深くて面白いと感じましたが、ソ連・ロシアを実際に目にしたことがない日本の若者にとっては、イメージを補ってくれる漫画が分かりやすいのでしょう。ソ連軍の兵器の描写に惹かれる軍事マニアも多いのだと聞きました。ただ、作者が丁寧に聞き取って記録した人々の言葉に込められた感情は、やはり文章によってしか伝わらないだろうと思いました。
もう一つ、樫本先生の講演で知ったのは、『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(通称「ロシデレ」)という作品が、スマホ世代の間で大ヒットしていることでした。私も「ロシデレ」の漫画は読んだことがあるのですが、ライトノベル原作から漫画化され、アニメ化され、グッズ販売につながるという典型的なサブカルチャー・サイクルに乗っている作品なのだそうです。ネットで検索してみると、YouTubeの公式ロシデレチャネルもあり、「アーリャ・ダンス」が練習できる動画は、なんと24万回も視聴されています。
アーリャさん
ちなみに、主人公のアーリャこと、アリサ・ミハイロヴナ・九条は、ロシア人の父と日本人の母の間で11月7日(革命記念日!)に生まれ、親の転勤に伴い日本に4年間滞在した後、ウラジオストクで5年間過ごし、再び日本に戻ってきたという設定です。日本で人気のアーリャさんは、なんとウラジオ育ち。将来、彼女のファンがウラジオストクを見に来てくれると嬉しいです。
私が子供の頃は、「漫画を読むと馬鹿になる」といって叱られた時代でしたから、親に隠れて人気漫画を読みふけったこともありました。決して漫画に偏見はないのですが、日本文学やロシア文学の名作を漫画で読もうという発想には、やはり寂しさを感じます。
今回のセミナーを終えた後、今の時代に、国境を越えるだけでなく、世代間のギャップを越えて、私達とスマホ世代をつないでくれるのは何なのだろうかと考えています。歳をとるにつれて、言葉の持つ力に感銘することも多く、読んで、書いて、考える力が大切だとつくづく感じます。AIは、人間を遙かに超えた効率で翻訳や作文を処理してくれますが、じっくり時間をかけて調べたり考えたりする過程こそ、「生きることの意味」を探す助けになる気がします。
今回のセミナーを終えた後、今の時代に、国境を越えるだけでなく、世代間のギャップを越えて、私達とスマホ世代をつないでくれるのは何なのだろうかと考えています。歳をとるにつれて、言葉の持つ力に感銘することも多く、読んで、書いて、考える力が大切だとつくづく感じます。AIは、人間を遙かに超えた効率で翻訳や作文を処理してくれますが、じっくり時間をかけて調べたり考えたりする過程こそ、「生きることの意味」を探す助けになる気がします。
T.M.