浦潮だより:力はどこにあるか

令和8年9月17日

浦潮だより:力はどこにあるか

 令和8年9月17日
 

ジャーナリストの石川一洋さん(元NHK解説員)がソーシャルメディアで言及していたのに興味をそそられて、ロシア映画「ブラート(兄弟)2」を観ました。2000年に公開されたこの作品は、90年代末のモスクワ、ニューヨーク、シカゴを舞台としています。主人公はチェチェン戦争帰りのロシア人ダニーラ。普段は優しい性格なのですが、正義感が強く、銃を持たせると腹が据わって驚異的な強さを発揮します。彼の戦友の弟はシカゴで活躍するアイスホッケー選手なのですが、米国人ビジネスマンに給与を横領されているため、そのカネを取り返すというストーリーです。クライマックスでダニーラが悪徳ビジネスマンと一対一で対峙し、銃を片手に語りかける台詞が決まっています。

 

「アメリカ人よ、力はどこにあると思う?兄貴はカネだと言う。でも俺は、力は真実にあると思うんだ。」
知人にこの映画の話をすると、最初は気がつかなかった点をいろいろ教えてくれました。ダニーラが米国で中古車を買うとき、売り手が、「俺たちはロシア人。ロシア人はお互いを騙さない。」と言うので笑えるのですが、この売り手はユダヤ系アクセントがあるとか、ダニーラを空港で待ち伏せしているのはウクライナ人グループだとか。もう一度観てみると、確かに微妙なヒントが随所に込められていて、一層味わい深いものがありました。
 
さて、実際にも、ロシアの友人から「人生はカネじゃない」と言われたことが何度かあります。90年代と違って今のロシアは豊かになり、特に首都モスクワは豪華なレストランやショップで溢れていますが、今でも「力はカネにあるのではない」と信じているロシア人は少なくないのでしょう。
 
日本人ダンサーの皆さん
日本人ダンサーと記念撮影
そんなことを考えている時、マリインスキー劇場沿海地方支部のバレエ団の練習を特別に見学する機会をいただきました。私は、現在8名の日本人ダンサーが所属しているこのバレエ団の大ファンです。いつもステージ上で輝いているダンサー達が、すぐ目の前で汗を流し、一心不乱に技術を磨いている姿を見て感動しつつ、畏れ多くて写真を撮ることができませんでした。スタジオの片隅からじっと練習を見つめながら、欠かさず修練を重ねた末に、初めて華やかな舞台があるのだということを胸に刻みました。
エリダール・アリエフ監督とプリマ・バレリーナのイリーナ・サポシュニコワさん達
ダニーラの問いかけに答えるとすれば、「力とは、ひたすらに情熱を傾けられることにある」のかもしれません。バレエ団の皆さんのように日々の努力を重ねていけたら、人生はきっと素晴らしいものになると思いました。

毛利忠敦