浦潮だより:ふるさと
令和8年10月2日
浦潮だより:ふるさと
令和8年10月2日
先日、日露交流史の専門家ゾーヤ・モルグン先生ご夫妻の結婚55周年を祝って、先生のご友人や教え子とともに公邸で夕食をご一緒しました。ご主人のグリゴーリー・モルグンさんは、今年10月で90歳になられるそうですが、目がキラキラと輝いていて、元気一杯です。ゾーヤ先生は、1965年に極東国立総合大学日本語学科の学生だった頃、シベリア鉄道のアルバイト乗務員として、日本からの学生グループを4日間に亘って接客した経験談を懐かしそうに語ってくださいました。その時知り合った法政大学大学生の若生完二(わこう・かんじ)氏から手紙が届き、後に日本で再会した話も素敵でした。当時のソ連でコムソモールカ(共産主義青年同盟の女学生)だったゾーヤさんには、日本人と結婚するなど思いも寄らないことだったそうです。ゾーヤさんの話を熱心に聞く私達の傍らで、夫のグリゴーリーさんは遠くに目をやりながら、「みんな若かったね。」と優しく微笑しておられました。
ゾーヤ・モルグン先生と新著『ロシアのハルビンにいた日本人の運命』
さて、モルグン夫妻は、来年1月・2月頃に久しぶりの訪日を計画しています。日本に数多くの旧友がいる中で、特に、歌手の加藤登紀子さんの姪にあたる暁子(あきこ)さんとの再会を楽しみにしておられます。ゾーヤ先生は、今年刊行したばかりの新著『ロシアのハルビンにいた日本人の運命』の中で、戦後日本でロシア料理店「スンガリー」を開店した加藤幸四郎さんとの交流についても回想しています。1869年に帝政ロシアによって建設されたハルビンの街で、登紀子さんは1943年に生まれました。加藤家の皆さんにとって、ロシア料理は「ふる里の味」なのですね。
ユジノサハリンスクで長年愛されたレストラン「ふる里」
ところで、公邸夕食会の場で、ゾーヤ先生の教え子のマリヤ・ノヴァクさんは、ユジノサハリンスクにあった日本料理店「ふる里」の話をしてくれました。ユジノサハリンスク市の名誉市民でもある宮西豊(みやにし・ゆたか)さんが長年経営し、地元に愛されてきた名店だったそうですが、2022年8月に突如閉店を余儀なくされました。マリヤさんは親しく交流を重ねてきた宮西さんから信頼されて、レストランにあった家具、メニュー、着物に至るまでの一切の家財を寄贈され、いつの日か「ふる里」をリオープンすることを夢見て、大切に保管しているそうです。ウラジオストクでレストラン「ふる里」が復活する日を見てみたいですね、と一同うなずき合いました。
メバルの煮付け(イズミ・ゆめタウン公式サイトより)
しじみの味噌汁(NHKエデュケーショナル「みんなのきょうの料理」サイトより)
皆様にとって、ふるさとの味は何でしょうか?私にとっては、瀬戸内海でとれるメバルの煮付けと、シジミ入りの味噌汁です。次の帰省の際に、あの懐かしい味をじっくり楽しみたいと思いました。
毛利 忠敦
毛利 忠敦