浦潮だより:タイガの森の動物たち
令和7年4月7日

浦潮だより:タイガの森の動物たち
令和7年4月7日
ウラジオストク総領事公邸は、郊外の緑深いところにあるのですが、野良猫の家族が毎日庭に遊びに来て和ませてくれます。着任当初は、厳しい冬を猫たちがどうやって越すのか心配でした。零下15度くらいの気温が続く真冬になると、ずっと屋外で過ごすのはさすがに辛いのでしょう。勇気ある猫は、私が車を出す隙に車庫に駆け込み、物陰に隠れてしまいます。暖を取るのは一向に構わないのですが、夜になって「出たいニャ~」と鳴き始めると、一家全員で大合唱。「雪ニモ負ケズ」の家族愛に脱帽でした。


さて、沿海地方の紋章になっているのは同じネコ科のアムール虎。旅行ガイドブックやお土産品など、さまざまな虎グッズがあり、街には虎のモニュメントが溢れています。希少動物なので本物を見かけることはありませんが、この街に暮らすうちに自ずと愛着を感じるようになりました。そういえば、黒澤明監督の映画「デルス・ウザーラ」では、ナナイ族の猟師デルスが虎の「アンバ」を撃ってから、代わりの「アンバ」が自分を殺しに来る、と恐れるようになります。虎はタイガの守り神だったのですね。宮崎駿監督のアニメ映画でも、トトロは武蔵野の森の守り神ですし(「隣りのトトロ」)猪神(ししがみ)の乙事主(おっことぬし)が人間相手に大暴れしたりします(「もののけ姫」)。自然を畏れ敬う感情は、日本人と共通しています。

それにしても、「デルス・ウザーラ」が公開されたのは1975年。もう半世紀も前のことです。ロシアの探検家ウラジーミル・アルセーニエフが著した沿海地方探検記が原作ですが、当時のソ連で現地ロケが実現したのは、まさに黒澤の気迫のゆえでしょう。改めて観てみると、ハンカ湖での遭難の危機、ウラジオストクへの鉄道、ハバロフスク市街など、今の私にとって身近なエピソード満載でした。ちなみに、当地にはアルセーニエフの名を冠した国立博物館があり、館内のお土産ショップは私のお勧めです。

もう一つ、最近シンパシーを感じるようになったのはマンモスです。日本の特別展で、サハの永久凍土から発見された赤ちゃんマンモスのミイラ「ユカ」を見たことがありますが、マガダン州でもしばしばマンモスの骨が見つかるそう。友人からお土産にもらったマンモス柄のマトリョーシカは、珍しいので山口の実家に飾ってあります。
前任地の豪州ではカンガルーやコアラ、ウォンバットなど、南半球の珍しい動物に数多く出会いましたが、ウラジオストクでは、タイガの森に棲む動物たちと出会い、この地の自然の魅力を感じています。
前任地の豪州ではカンガルーやコアラ、ウォンバットなど、南半球の珍しい動物に数多く出会いましたが、ウラジオストクでは、タイガの森に棲む動物たちと出会い、この地の自然の魅力を感じています。